2020/04/20 12:13
マスクを手作りする人が急増していますね。
先日も近所の手芸屋に行ったらいつにない混雑ぶり。みなさんマスクを作りたいらしく、でももう何十年もお裁縫箱開けてませんみたいな方ばかりで、お客さん同士で作り方を教え合ったていたり、店員さんも巻き込んでてんやわんやの大騒ぎでした。
私は「ソーシャルディスタンス…」
と心の中でつぶやきそそくさと退散したのですが笑、それはさておき、これを機に針仕事に目覚める方が増えるのは良い事と思います。
ミシンも売れているとか!素晴らしい!
手作りマスクで人気を分け合っているのがプリーツ型と立体型。
簡単に作れるのはプリーツ型でしょうか。
私は今回初めて立体型を作ったのですが、私的にはこちらが好きです。
鼻と口周りに空間ができるので、呼吸も会話も楽。
ガーゼの肌触り。包み込まれているような安心感。とても気に入っています。
洗うのはちょっと面倒だけど、使い捨てる罪悪感もないし買いに並ぶ手間もない。何よりファッショナブルです。どんなにおしゃれしても不織布マスクひとつで台無しになりますからね。
これからのマスクはコーディネートの一部。おしゃれアイテムです。
もう不織布には戻れません。布マスクはコロナのもたらした恩恵、と私は思っています(´∀`)
さてその立体マスク、別名「ベトナムマスク」とも呼ばれているのをご存知ですか?
大通りを埋め尽くすほどのバイク渋滞が深刻な大気汚染を生み出しているベトナムでは、みんな大きなマスクですっぽり顔を隠してバイクに乗っているからです。
何を隠そう、私の初海外旅行は学生時代。2週間のベトナムの旅でした。
初海外な上に友人3人での個人旅行。
若さとは恐ろしいもので、英語だってろくに喋れないのに(中高6年間学んだ英語がここまで通用しないものとは!なんとかなると思っていたけど聞き取りすら全くできなかった(T_T))、宿の予約もなし、プランもほとんどなし、往復航空券のみを握りしめての行きあたりばったり旅はもちろんハプニングの連続でした。
深夜にバックパック背負って宿を探し回ったり、道案内してくれる優しげなお兄さんに付いて行って誘拐されそうになったり、シクロの運ちゃんとバトったりお腹壊したり、まぁ一通りのハプニングを経験しましたが、スマホなんて物がない時代の不自由な旅は、今やろうと思ってもなかなかできない貴重な体験だったのだと思います(*´∇`*)
出発前に友人が「それぞれ旅の目的を決めよう。私はベトナム語で現地の人と話がしたい」と言ったので、「じゃあ私はベトナムの景色や人々を写真におさめたい」と言って、小遣いはたいて一眼レフを買いました。
結局ろくな写真は撮れなかったけれど笑、これがきっかけで後々写真の道に進むことにもなりました。
かれこれ20年以上も前のベトナムは、バイクの量こそすごかったけれど、街を一歩出るとひたすらのどかな田園風景。
ぽてぽて歩く水牛、見渡す限りのピンクの蓮畑、田んぼ作業をしている人々のノンラー(ベトナム風すげ傘)、その向こうの山々が水墨画のように霞み、まさに別世界の美しさでした。
そんな中をどこから来てどこへ行くのか、赤にオレンジに青に、鮮やかなアオザイを纏った女性たちが、バイクでビューンと抜かして行くのでした。
いちめん緑の風景の中のビビッドな原色が、目にとても新鮮でハッとしたことを良く覚えています。
その後、スリランカやタイやバリなどアジア各国の旅でも同じような光景を目にすることになるのですが、田舎景色と民族衣装が織りなす美しい光景がいつしか心象風景となって、私の着物リメイクの源にたゆたっているような気がしてなりません。
私のリメイクが、黒留袖でもなく、アースカラーが多い綿絣系でもなく、赤やピンクなどのビビッドなお着物に偏りがちなのは、きっとそういうことなのだと思います。
旅の前半はのんびりしたハノイ、後半は喧噪のホーチミンに滞在し、日本語学校で日本語を教えるボランティアにも参加しました。
学生たちは一生懸命日本語を勉強し、日本に行って働いて家族に仕送りするのだと言っていました。
日本の縫製工場での雇用が多いのか、縫製の授業もあるようでした。
キラキラ目を輝かせたあの子たちは今ごろどうしているかな。日本には来られたのかな。日本で嫌な思いをしなかったかな。
当時の私に、「20年後のあなたは毎日ミシンを踏んで、アオザイみたいな鮮やかな服を縫っているよ」と言っても絶対信じてくれないだろうと思います。
ベトナムマスクを縫いながら、今の私に繋がる「種」だったあの旅のことを思い出すのです。
今世界はコロナウィルスに滅ぼされまいと必死で戦っている。
40年生きて来て(サバよんでます⊙‿⊙)こんなに大きな社会現象に直面するのは初めてのことで、私も日々うろたえている。
コロナ後の世界について、ずっと考えています。
淘汰されていくもの、新しく生まれるもの。
人の価値観も、緩やかに、でもとても大きく変わっていくはずです。
私が愛してやまないファッションや旅行、などというものは、もしかしたら衰退して行く運命にあるのかもしれない。
そう思うと息ができないくらい苦しくなるけれど、時代のうねりに翻弄されながらも私は好きなことを死ぬまで追い求めたい。
その時がきたら、一番お気に入りの着物を選んで自分のためだけの服をつくり、それをひるがえらせて世界中を旅したい。
そんな気持ちで、今はマスクを作っています。
★着物リメイクのMU handwork★
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